1. Layer 2(L2)って何?
1-1. Layer 1(L1)とLayer 2(L2)の関係
イーサリアムは、ブロックチェーン本体(メインネット)を指す「Layer 1(L1)」として機能しています。
近年、イーサリアムは利用者が増えたことで、「手数料(ガス代)が高い」「処理速度(トランザクション処理能力)が足りない」という課題が顕著になっています。
そこで登場したのが、メインネット(L1)に直接変更を加えなくても、別のレイヤー(L2)でトランザクションを処理しようとする仕組みです。
L2は、イーサリアムのセキュリティを活かしつつ、高速・低コストで多数の取引をさばくことを目指しています。
1-2. なぜL2が必要?
イーサリアムは人気が高まるほどトランザクションが増え、結果としてガス代が上昇し、ネットワークが混雑してしまいます。
イーサリアム本体(L1)を大幅にアップデートすることは可能ですが、それでも根本的な拡張には限界があると考えられています。
L2ソリューションを使えば、イーサリアムの安全性を保ちながら、多くの取引を素早く処理し、手数料を抑えることができるのです。
2. L2の代表的な仕組み
イーサリアムのL2ソリューションには、大きく分けてサイドチェーンやロールアップなど、いくつかのアプローチがあります。
2-1. サイドチェーン
サイドチェーンは、イーサリアムのメインネットとは独立したブロックチェーンを運用し、メインネットとはブリッジ(橋渡し)でつながっています。
取引そのものはサイドチェーン上で高速かつ安価に行われ、必要に応じてメインネットとやり取りします。
例としては、Polygon(旧Matic)などが有名です。
ただし、サイドチェーンは独自のバリデータ(取引を承認する仕組み)を持つため、イーサリアムのL1と完全に同じセキュリティを共有しているわけではない点に注意が必要です。
2-2. ロールアップ(Rollups)
「ロールアップ」は、イーサリアムのL1へ定期的に取引データをまとめて送ることで、イーサリアムのセキュリティをほぼそのまま利用しながら高速・低手数料を実現しようとする仕組みです。
ロールアップには大きく2種類あります。
2-2-1. Optimistic Rollups(オプティミスティック・ロールアップ)
通常は「正しい取引データが送られているだろう」と楽観的(optimistic)に処理し、もし不正な取引が見つかったときのみ異議申し立て(チャレンジ期間)を行う方式です。
代表的なL2としては、ArbitrumやOptimismが挙げられます。
ガス代はL1に比べて格段に安く、処理速度も速い反面、異議申し立ての期間があるため、資金をL2からL1に戻すのに数日かかるなどの特徴があります。
2-2-2. ZK Rollups(ゼロ知識ロールアップ)
暗号技術の「ゼロ知識証明(ZK)」を使い、トランザクションの正しさを証明する方式です。
データをイーサリアムに送る際、不正があれば弾かれるため、Optimistic Rollupsのように異議申し立て期間を待たずに済みます。
代表的なL2としては、zkSyncやStarkNet、Polygon zkEVMなどがあります。
現時点では開発が複雑で技術的ハードルが高いですが、最終的にはZK Rollupsが主流になる可能性も指摘されています。
3. 代表的なL2プロジェクト
3-1. Arbitrum
Optimistic Rollupsを採用したL2で、大手DeFiプロジェクトなども多く採用。
ガス代はイーサリアムよりずっと安く、処理も速いことが特徴です。
3-2. Optimism
こちらもOptimistic Rollupsを採用。
トークン「OP」が発行されていて、プロジェクトのガバナンス(運営方針の決定)に利用されています。
3-3. Polygon(ポリゴン)
もともとはイーサリアムのサイドチェーン的な立ち位置でしたが、Polygon PoSチェーンやPolygon zkEVMなど複数のL2/サイドチェーンを展開しています。
独自トークン「MATIC」があり、手数料の支払いなどに使われます。
3-4. zkSync / StarkNet
ZK Rollupsの技術を使ったL2で、将来的に大きく伸びると期待されているプロジェクト群。
まだテスト段階の要素も多いですが、高速決済とセキュリティの両立を目指して活発に開発されています。
4. L2を利用するメリットと注意点
4-1. メリット
- 手数料の大幅な低下
イーサリアムL1でのガス代が高い時期でも、L2上なら格安で取引可能。 - 高速トランザクション
処理をL2上でまとめて行い、必要なデータだけL1に送るため、取引の反映が早い。 - イーサリアムのセキュリティを部分的に継承
ロールアップは定期的にL1にデータを送るため、不正な取引があれば検出される。
4-2. 注意点
- ブリッジのリスク
L2とのやり取りには「ブリッジ」機能を使うことが多いが、ハッキングリスクや操作ミスに注意。 - ユーザー体験がやや複雑
ウォレットやブリッジの操作など、L1だけ使う時よりも学習コストが高め。 - 開発途上で仕様が変わる可能性
L2技術はまだ進化の途中のため、ハードフォークやアップグレードが頻繁に行われ、状況が変化しやすい。
5. どうやってL2を使うの?
対応ウォレットを用意する
例:MetaMaskなどのウォレット。
ネットワーク設定で、ArbitrumやOptimismなどを追加することができます。
資金をブリッジする
イーサリアムL1上にあるETHやトークンを、L2のネットワークに移す(ブリッジ)必要があります。
L2上のDeFiやNFTマーケットを利用する
例:Arbitrum上の有名DeFiプロトコル、Optimism上の分散型取引所、zkSync上のNFTプラットフォームなど。
6. まとめ
イーサリアムのLayer 2(L2) は、メインネット(L1)のスケーラビリティ問題(手数料高騰・速度不足)を解決するための拡張技術です。
主に「Optimistic Rollups」と「ZK Rollups」という仕組みがあり、それぞれArbitrumやOptimism、zkSync、StarkNetといったプロジェクトが活発に開発を進めています。
L2を使うことで、格安な手数料と高速な取引が実現可能になり、NFTやDeFiを含む多くの分散型アプリケーションの普及が加速しています。
ただし、まだ新しい技術のため、ブリッジの安全性や仕様の変更など、注意すべき点も多いのが現状です。
イーサリアムのエコシステムは今後も成長が予想され、L2の利用がますます一般的になると考えられています。
興味があれば、小額の資金から試してみたり、ウォレットの設定を学ぶなど、段階的に触れてみてみてくださいね。