従来のNFTの「保存場所」の問題
一般的なNFTでは、トークンの発行情報(メタデータ) はイーサリアムなどのブロックチェーン上に記録されていますが、実際の画像・音楽などのデータ本体は外部サーバーやIPFS(分散ストレージ)に置かれることが多いです。
そのため、外部リンクが切れたり、運営元がサービスを停止すると、NFT画像が表示できなくなるリスクがあります。
フルオンチェーンNFTの特徴
フルオンチェーンNFTとは、作品のデータ(たとえば画像やアート生成用のアルゴリズム)も含めて、すべてをブロックチェーン上に格納する形のNFTを指します。
外部に頼らず、オンチェーンの情報だけで完全に作品を再現できるのが最大のポイントです。
CryptoPunksとフルオンチェーン
CryptoPunksの概要
CryptoPunks は、2017年に Larva Labs(現・Yuga Labs系列)がリリースした、イーサリアム上で動く最初期のNFTプロジェクトの一つです。
24×24ピクセルのドット絵スタイルのキャラクター(合計10,000体)が発行され、のちに NFT コレクターの間で高い人気と価値を持つようになりました。
CryptoPunks とオンチェーン化の歴史
初期の CryptoPunks はフルオンチェーンではなかった
CryptoPunks は 2017 年にリリースされた非常に早期の NFT プロジェクトとして知られています。しかし、当初はパンクのドット絵画像データ自体をイーサリアムのコントラクトに完全に格納していませんでした。
具体的には、コントラクトに記録されていたのは「10,000 体分のパンク画像を合成した大きな画像のハッシュ値」と各パンクの所有情報や売買オファーなどのマーケット関連データです。
そのため、個々のパンク画像を表示するための実際のビットマップデータはオフチェーンにあり、Larva Labs のウェブサイトなど外部のリソースを参照する仕組みとなっていました。
コミュニティによるオンチェーン化の試み
CryptoPunks は初期の実装上「完全オンチェーンでない」ことが一部のコレクターから懸念されており、「もし外部サーバーがなくなった場合はどうなるのか」といった永続性の問題が議論されていました。
こうした状況を受け、一部のコレクターや開発者が非公式に独自の圧縮手法を用いてドット絵データをコントラクト内に書き込み、真の意味でオンチェーン化を図るプロジェクトを立ち上げた例があります。
これらの派生プロジェクトでは、パーツごとの画像データを組み合わせる方式などを活用し、オンチェーンで生成できる仕組みを模索しました。この動きは当時の NFT 界隈で大きな話題となり、完全オンチェーンアートの可能性を示した事例として評価されています。
現在の CryptoPunks は公式にフルオンチェーン化
2021 年 8 月、Larva Labs は「CryptoPunks Data」という新たなコントラクトをデプロイし、CryptoPunks のすべてのアートと属性データをオンチェーンに格納する取り組みを公式に実現しました。
このアップデートにより、画像および属性情報がすべてイーサリアム上のデータとして生成可能となり、ウォレットやアプリケーションでパンクの SVG 画像を直接コントラクトから取り出すことが可能になっています。
こうして、現在の CryptoPunks は名実ともにフルオンチェーン NFT として扱われており、その点が非常に高い評価を得ています。
フルオンチェーンNFTの利点
永久性と改ざん耐性
ブロックチェーンは、データの書き換えや削除が極めて困難です。すべてがオンチェーンにある場合、外部サーバーのダウンやリンク切れのリスク を大幅に抑えられます。
「本当に所有している」実感
NFTを買っても画像が外部リンク依存だと「所有しているのは本当にトークンIDだけでは?」と感じる人も少なくありません。フルオンチェーンなら、作品データ自体もチェーン上でユーザーが“保持”している感覚を得られます。
フルオンチェーンNFTの代表例
Nouns
24×24ドット絵のキャラクター「Noun」を、毎日1体ずつオークションにかけるスタイルのプロジェクト。
アートデータ、属性情報、さらにはコミュニティ運営の仕組みまでもフルオンチェーンで実装しており、新時代のガバナンスモデルとして注目を集めています。
OnChainMonkey
10,000体のサルをモチーフとしたNFTコレクション。画像情報やメタデータをすべてコントラクト上に格納し、外部リソースに頼らない形で実装されています。
まとめ
フルオンチェーンNFT とは、NFTの発行情報だけでなく、画像やアート生成アルゴリズムなどの作品データまでチェーン上に格納する手法で、従来型の「リンク依存」NFTとは一線を画します。
代表的な例としては「Nouns」「OnChainMonkey」などがあり、いずれも高い耐久性と改ざん耐性を備え、コレクターたちに支持されています。
一方、歴史的に有名な CryptoPunks は初期のNFTとして非常に重要な地位を持っていますが、アートデータをフルオンチェーン化していない部分があり、のちにコミュニティでラップ(Wrapped)したり、別途オンチェーン化を工夫する派生プロジェクトが生まれるなど、「完全なフルオンチェーン」かどうかはプロジェクトによってアプローチが異なります。