はじめに
この記事では、Gnosis Safeでマルチシグウォレットを作成して、暗号資産(仮想通貨)のセキュリティを向上させる仕組みをまとめました。
マルチシグウォレットを簡単に説明すると、複数のアドレスの承認を必要とするウォレットになります。
マルチシグとはマルチシグネチャー(Multisignature)の略。
マルチシグネチャーは複数の署名という意味で、仮想通貨(暗号資産)の取引において、複数の秘密鍵を必要とする仕組みを指しています。
通常行うのはシングルシグといって、1つの公開鍵(アドレス)と1つの秘密鍵を使って取引しています。
例えば、アドレスに入っているDeFiの取引所で仮想通貨を別の仮想通貨にスワップするとき、MetaMaskで1回だけ承認するのがシングルシグ。
DeFiでマルチシグウォレットで保管している資産をスワップするときは、複数の承認が必要なります。
シングルシグに比べてマルチシグのメリットデメリットをまとめると以下になります。
<メリット>
マルチシグウォレットの最大のメリットはセキュリティの向上です。
複数のウォレットアドレスの署名(承認)が必要なので、資産を盗まれるリスクが少なくなります。
複数の人が管理するウォレットとして利用したり、個人で複数のアドレスを使い分けて、管理する資産のセキュリティ向上を実現することができます。
<デメリット>
複数のアドレスの管理(リカバリーフレーズの管理)が必要になり、同じ場所で管理していると、もしもの場合に全ての資産を失ってしまう恐れがあるので、別々の場所で管理する必要があります。
具体的には管理するデバイス(PC、スマホ、紙)を複数にするといった手間がかかります。
ビットコインの場合は、標準的な機能としてマルチシグの仕組みを持っているのですが、イーサリアムはマルチシグの機能が備わっていないので、スマートコントラクトを使ってマルチシグを行えるようにする必要があります。
イーサリアムやERC-20のトークンを管理するマルチシグウォレットを簡単に作成できるのがGnosis Safeです。
この記事で紹介するGnosis Safeは、誰でもマルチシグウォレットを作成できるプラットフォームです。
Gnosis Safeのマルチシグウォレット作成機能はイーサリアム以外に複数のチェーンに対応しています。
Gnosis Safeに入っているETHとERC20トークンの価値は約$60Billionとめちゃ多いんです。
また、Gnosis Safeで作られているマルチシグウォレットの数も5万を超えていて、そのトランザクションはどんどん増えています。
この記事では、Gnosis Safeでマルチシグウォレットを作成して、資産を管理する方法をまとめました。
具体的には、BNB Chain(Binansce Smart Chain)で3つのオーナーアドレスで管理するマルチシグウォレットを作成する方法です。
マルチウォレットを作成するチェーンやオーナーのアドレス数は変えられるので、自分に合った条件に応用してみてください。
これからマルチシグウォレットを作成してDeFiの資産を管理したい人の参考になればと思います。
マルチシグウォレットの3つのオーナーウォレットを準備する
まずはじめにGnosis Safeで作成するマルチシグウォレットを管理するオーナーのウォレットを準備します。
今回は3つのウォレットアドレスを準備してマルチシグウォレットのオーナーとして登録しました。
また、登録したウォレットアドレスのうち、2/3のウォレットアドレスの署名で取引を実行できるように設定しました。
ウォレットアドレスはそれぞれ異なるデバイスで管理した方がセキュリティを上げることにつながるので、私の場合は以下のように使い分けることにしています。
- アドレス1:メインPCで使用
- アドレス2:サブPCで使用
- アドレス3:スマホで使用
メインPCとサブPCのアドレスどちらかが使えなくなった場合、メインPCとスマホ、あるいはサブPCとスマホでセキュリティは確保できる形になります。
仮に3つのうち1つのアドレスを乗っ取られても、資産は守られます。
なお、この記事では、BNB Chainでマルチシグウォレットを作成するので、MetaMaskにチェーンの設定を追加してくださいね。
BNB Chainの設定はChainlistで簡単にMetaMaskへ追加できます。
やり方は簡単で、Chainlistにアクセスして、BNB Chain(Binance Smart Chain)を検索で表示して、「Add To Metamask」をクリックして、MetaMaskに設定を追加するだけです。
また、マルチシグウォレットを作成するためには、 オーナーのウォレットにガス代が必要なので、BNB Chainなら、BNBをオーナーのウォレットに入れておいてください。
マルチシグウォレットを作成した後、取引をする場合もオーナーとしてトランザクションの実行を承認する際にガス代が必要です。
従って、マルチシグウォレットの全てのオーナーウォレットにガス代を入れておくのが無難です。
イーサリアムだとガス代が高いので注意してくださいね。
お試しでやるなら、ガス代の安いチェーンがオススメです。
Gnosis Safeでマルチシングアドレスを作成する
まずマルチシグウォレットを作成するために、アドレス1(メインアPC)でGnosis Safeのサイトにアクセスして「Open app」をクリックします。
表示されるサイトの右上から、「BNB Smart Chain」を選択。
続いて「+Create new Safe」をクリック。
ここからがマルチシグウォレット作成の具体的な操作になります。
まずマルチシグウォレットを作成するために使用するウォレットの接続を行います。
「Connect」をクリック。
ウォレットにMetaMaskを選択します。
(この時、MetaMaskでBNB Smart Chainに繋げておいてください)
「Safe name」に任意の名前を設定して「Continue」をクリック。
「Owner Address」に先ほど接続したMetaMaskのアドレスを貼り付けます。
「Owner Name」は後でも設定できるので空欄で構いません。
続いて、「+ Add another owner」をクリックしてオーナーを2つ追加します。
「Owner Address」に追加したいオーナーのアドレスを貼り付けて、「Continue」をクリック。
なお、「Any transaction requires the confirmation of」でトランザクションの実行に必要なオーナーの数を変更できますが、後でも変更できるので1のままにしておきます。
最後に設定の内容を確認して「Create」をクリック。
MetaMaskが確認を求めてくるので「確認」をクリック。
(ガス代がかかります)
これでGnosis Safeでマルチシグウォレットの作成が完了です。
続いて「Get Started」をクリック。
「Continue」をクリック。
Gnosis Safeの画面左上にAccount1という名前でBNB Chainのマルチシグウォレットのアドレスが表示されます。
マルチシグウォレットの取引承認に必要なオーナー数を2/3に設定する
続いて、作成したマルチシグウォレットで取引する際に必要なオーナーの承認数を変更します。
初期の設定では、3つのオーナーのうち、1つのオーナーで承認できる設定にしていましたが、2つのオーナーの承認で実行できるように変更します。
やり方は左メニューの「Settings」の「Policies」から行います。
現在の「1 out of 3 owners」を変更するために「Change」をクリック。
「Any transaction requires the confirmation of」で「2」を選択して、「Submit」をクリック。
MetaMaskが確認を求めてくるので「確認」をクリック。
(ガス代がかかります)
このような表示が出て、しばらくすると設定が完了します。
完了したらもう一度、左メニューの「Settings」の「Policies」で設定が変更されているか確認しておきましょう。
Gnosis Safeのマルチシグウォレットに資金を送金する
続いて、マルチシグウォレットで取引するために、マルチシグウォレットのアドレスにBNBとUSDCを送金しました。
マルチシグウォレットへの送金の仕方は通常行う送金と同じです。
送金先のマルチシグウォレットのアドレスは左メニューの一番上に表示されているのでクリップボードにコピーしておいてください。
ここでは、BNB Chainの別のウォレットからMetaMaskを使って送金しましたので、その流れを紹介します。
まずBNBの送金です。
MetaMaskのアセットからBNBを選択して、「送金」をクリック。
送金先のアドレスに先ほどコピーしたマルチシグウォレットのアドレスを貼り付けます。
注意点としては、貼り付けた際のアドレスの先頭に「bnb:」が表示されてしまうので、削除してください。
Gonsis側のバグだと思いますが、削除しないとアドレスとして認識してくれないです。
あとは、「金額」に送金したいBNBの量を入れて「次へ」をクリック。
最後に「確認」をクリック。
送金が完了したら、Gonsis Safeの左側メニューから「Assets」を選んで着金を確認してください。
同様に操作して、取引テスト用のUSDCもマルチシグウォレットに送金しておきました。
Gnosis Safeのマルチシグウォレットを使ってDODOでスワップする
いよいよマルチシグウォレットで取引テストしてみます。
取引はDODOでUSDCをBUSDにスワップするという内容です。
アドレス1(メインPC)とアドレス2(サブPC)を使って取引する流れとなります。
アドレス1(メインPC)でDODOに接続してUSDCの取り扱いを承認
メインPCのアドレス1でGnosis Safeに接続した状態にしておきます。
Gnosis Safeの左側メニューで「Apps」を選択すると、BNB Chainで利用できるプラットフォームが表示されるので、DODOを選択します。
DODOがGnosis Safe内に表示されます。
「スワップ」でUSDCとBUSDを選んで、スワップするUSDCの数量を入れて、「USDCを承認する」をクリック。
初めて使うので、USDCの使用の承認→スワップという2つのトランザクションを実行するかたちになります。
ここからDODOでUSDCを利用するトランザクションをマルチシグウォレットで承認する手続きが開始されます。
まずこの画面で「Submit」をクリック。
MetaMaskが署名を求めてくるので「署名」をクリック。
(ガス代はかかりません)
これでオーナーとしてのアドレス1の承認が得られたことになるので、続いてアドレス2で承認を行います。
アドレス2(サブPC)でDODOに接続してUSDC取り扱いを承認
次にアドレス1が署名したマルチシグウォレットの取引をアドレス2で承認する手続きを行います。
まずアカウント2をGnosisi Safeでマルチシグウォレットに接続します。
Gnosis Safeのサイトに行ったら、右上の「Connect Wallet」をクリックしてMetaMaskを接続。
続いて「Load Existing Safe」の「Add existing Safe」をクリック。
作成済みのマルチシグウォレットに接続する手続きが始まりますので、「Continue」をクリック。
「Safe name」に任意の名前を入力して、「Safe Address」に作成したマルチシグウォレットのアドレスを入力(コピペ、QRコード読み取り)し、「Next」をクリックします。
(Mac同士なら、アカウント1を操作しているPCでマルチシグウォレットのアドレスを表示させて、ユニバーサルクリップボードでコピペできます)
マルチシグウォレットで設定されている情報が表示されるので、確認したら「Continue」をクリック。
「Add」をクリックしたら接続手続き完了です。
Gnosis Safeの左側メニューの一番上にマルチシグウォレットのアカウントが表示されていることを確認してください。
続いて、求められているトランザクションの実行を承認するために、左側メニューの「Transactions」の「Queue」を選択します。
承認まちのトランザクションが表示されるので、選択して、「Confirm」をクリック。
続いて「Submit」をクリック。
MetaMaskが確認を求めてくるので「確認」をクリック。
(ガス代がかかります)
これでDODOのUSDC使用承認のためのトランザクション実行に2/3のオーナーが承認が完了し実行されます。
続いて、アドレス1(メインPC)に戻ってDODOの取引を続けます。
アドレス1(メインPC)でUSDC-BUSDのスワップを承認
アドレス1に戻ったら、スワップの実行を行うために「確認」をクリックします。
(5 USDCをBUSDにスワップする)
続いて「Submit」をクリック。
MetaMaskが署名を求めてくるので「署名」をクリック。
(ガス代はかかりません)
アドレス2(サブPC)でUSDC-BUSDのスワップを承認
先ほどと同様にアカウント2でもGnosis Safeでトランザクションの実行を承認します。
「Transactions」の「Queue」を選択します。
承認まちのトランザクションが表示されるので、選択して、「Confirm」をクリック。
つづて「Submit」をクリック。
MetaMaskが確認を求めてくるので「確認」をクリック。
(ガス代がかかります)
これでマルチシグウォレットでスワップを実行するための2/3のオーナーの承認が得られたので取引が実行されます。
Gnosis Safeのマルチシグウォレットのスワップ結果を確認する
アドレス1のGnosis Safeの画面に戻ると、DODOで取引完了の表示が確認できました。
メニューのAssetsでもUSDCが減って、BUSDになっていることがわかります。
(マルチシグウォレットのBNBはガス代としては使われないので減っていなかったです。)
最後に
この記事では、Gnosis Safeでマルチシグウォレットを作成して、3つのオーナーアドレスを登録し、DeFi取引を行う手順を紹介しました。
3つのアドレスをオーナーとして登録し、2つのアドレスで取引可能にしておけば、仮に1つのアドレスを乗っ取られても、資産を守ることができます。
マルチシグウォレットは仮想通貨の資産を守るための武器になりますね。
気づいた点といえば、2つのアドレスで承認する場合、初めに承認する際はガス代が発生せず、最後の承認をするアドレスでガス代が発生します。
この記事ではBNB Chainを例にして説明しました。
他のチェーンでマルチシグウォレットを使う場合はチェーンごとに作成が必要です。
イーサリアムだとマルチシグウォレットを作る際に高いガス代が発生するので注意してくださいね。
個人的には、マルチシグウォレットに慣れてきたら、長期期間動かさない資産の一部を移しておきたいと思います。
通常のアドレスでセキュリティに不安を感じていたり、複数のウォレットアドレスで資産を管理したい場合は、マルチシグウォレットを検討してみてください。
なお、Gnosis Safeのアプリをスマホにインストールすれば、マルチシグウォレットをスマホで操作できるようになりますよ。
アプリのインストール方法はこちらの記事で紹介しているので参考になればと思います。
関連記事
オススメ記事